論文トップページへ2014201320122011201020092008200720062005200420032002200120001999
19981997


1997年

学会発表
 
1
石田欣二, 林秀一郎
凍結超薄切片の実際と問題点 -神経組織への応用を目指して-
生理学技術研究会, 愛知
私達は、これまで、徳安らの報告に準じて、いくつかの組織で凍結超薄切を実施し、免疫電子顕微鏡用試料を作製してきた。最近、本法を中枢神経組織に応用したところ、超薄切片を得ることはできるものの、形態保存性が、これまでの試料と比べ極端に悪く、また、凍結深度も十分なものではなかった。そこで、中枢神経組織の標本作製に当たっては、従来のプロパンによる急速凍結法に換え、金属圧着法を用いることとした(エイコー MF-2型)。本装置ではマイクロウェーブを併用し、より深い凍結深度を得ることが出来る。しかしながら、PVPを使用すると試料が熱を発生し変質してしまい、凍結超薄切片法に必要な凍結試料を得ることができなかった。これを解決するため、急速凍結用試料として、PVPを使用せず、かわりに、切削性を考慮して15%ショ糖を用いたところ、組織形態保存性の改善がみられた。以上、これまでの結果を発表させて頂き、参加者各位のご助言を仰ぎたい。
 
2
石田欣二, 林秀一郎, 高塩 稔
凍結超薄切片用吸着染色の手技
医学・生物学電子顕微鏡技術研究会 第13回学術講演会, 神奈川
凍結超薄切片法は、急速凍結装置や凍結超ミクロトームの安定化、凍結超薄切技術の向上などから免疫細胞化学的研究を容易にし、欠かすことのできない手法となっている。我々は徳安の方法に倣い、polyvinylpyrrolidone-sucrose混合液を浸透させた試料の凍結超薄切片を作製し、免疫染色の後、polyvinyl alcohol-uranyl acetate混合液で吸着染色(adsorption staining)を施して電顕観察を行っている。しかし、凍結超薄切や免疫染色は比較的順調に進むのであるが、最後のステップである吸着染色で度々失敗を繰り返した。ここでは、その失敗の原因を究明する。
 
3
高塩 稔
大型試料のオスミウム金属コーティング
医学・生物学電子顕微鏡技術研究会 第13回学術講演会, 神奈川
最近、走査電顕用試料のためにオスミウム・プラズマコータが利用されるようになり、導電処理の困難な血管鋳型標本などでも電子線照射による帯電や高倍率時の解像度低下などの問題解消に役立っている。しかし、この装置を利用できる試料の大きさ、とくに、試料の高さに制限があり、電極(陰極)上に置く試料の高さは2mm以下とされる。しかし、血管鋳型標本などでは、その範囲内に割断することが難しい場合が多く、この装置では良好なコーティングができないことになる。ここでは、オスミウム・プラズマコータ(日本レーザ電子 NL-OPC80A)の電極の形状を改造し、より大きな試料でも良好なオスミウム金属コーティングができたので報告する。
 
論文
 
1
石田欣二, 林秀一郎
凍結超薄切片法の実際と問題点 -神経組織への応用を目視して-
生技研報告 19: 80-83, 1997.
凍結超薄切片は、電子顕微鏡レベルで免疫組織化学を実施する方法のうち、抗原性が比較的弱いものにも応用が可能であるため、その必要性は高い。これまで徳安らをはじめ様々な工夫がなされ、一般的には、実用性のある凍結超薄切片を得ることができるようになったと考えられている。実際、私達の施設でも、筋・骨・角膜など、いくつかの組織については本法を実施し、良好な成績を得てきた。しかし、最近、中枢神経組織で同様に試みたところ,他の組織での結果とくらべ、組織の形態的保存が極めて悪く、研究用切片としては使用出来なかった。そこで、中枢神経組織については、試料の凍結方法をこれまでの液化プロパン浸漬法から、金属圧着急速凍結法へ変更し、実施したところ、形態的保存性に関しては、ある程度改善された。ここでは、以上のような、私達の凍結超薄切片法についての現状を紹介したい。
 
2
高塩 稔
急速凍結置換固定法
医・生電顕会誌 12: 30-33, 1997.
生の試料を凍結固定し、氷点以下の温度に保ったまま、試料中の氷を有機溶媒と置換する凍結置換法は細胞や組織に含まれる物質をよく保存することが知られており、光学顕微鏡レベルの組織化学的研究に古くから利用されている。凍結固定に急速凍結法を導入し、置換液である有機溶媒にオスミウム酸などの化学固定剤を溶解して用いることによって固定効果を更に向上させた方法が急速凍結置換固定法であり、電子顕微鏡レベルでの研究に広く利用されるようになった。この固定方法は微細構造検索に多く利用されているが、電子顕微鏡レベルの酵素組織化学や免疫細胞化学にも応用される。ここでは急速凍結置換固定の方法を紹介する目的から、筆者らが通常行っている微細構造観察のための方法を肝組織を用いて述べる。